実証試験

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IGCC(石炭ガス化複合発電)

実証試験内容と試験結果(概要)

 IGCC実証試験は、ガス化炉に点火した2007(H19)年9月から2011(H23)年3月までの約3年7ヶ月にわたり、下表のスケジュールで実施し、当初目標としていた指標を概ね達成することができました。

 また今後は、2011(H23)年度から2012(H24)年度末までの2年間、新たな課題への対応とIGCC技術の成熟化に向けて、主として信頼性、経済性、炭種適合性に関する検証試験をさらに進め、円滑な商用化へつなげていく計画です。

実証試験スケジュール

実証試験スケジュール

実証試験の検証項目と内容(平成22年度まで)

検証項目 内 容
1) システムの安定性 プラント異常時において安全に停止できること、また石炭ガスを安全にハンドリングできることを検証する。
2) 設備の信頼性 信頼性確認のため最低2000時間の連続運転(夏季3ヶ月間相当)を行う。
3) 炭種適合性 設計炭以外にも複数の炭種を用いて運転を行い、将来の商用機設計に資する特性データを取得する。
4) 高効率性 目標熱効率の達成により、IGCCの最大の特徴である高効率性を検証する。
5) 耐久性 長時間運転と開放点検により、設備の耐久性を検証する。
6) 経済性 運転実績に基づいて、商用機における建設費・運転費・保守費等を総合的に評価し、経済性を評価する。

1) システムの安定性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・プラント異常時における安全停止
  • ・プラント異常を模擬して安全に停止することをインターロック試験により確認
システムの安定性を確認目標達成
  • ・石炭ガスの安全なハンドリング
  • ・各種試験や調整を行うことで石炭ガスの安全なハンドリングと運転状態に異常が無いことを確認
  • ・定格負荷250MWにおける継続的な安定運転によるシステムの安定性を確認

2) 設備の信頼性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・2000時間の連続運転
    (夏季3ヶ月間相当)
  • ・累積連続運転2039時間を確認
連続運転の目標は達成したが、今後も継続して中長期的な耐久性等の検証をしていく目標達成

3) 炭種適合性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・設計炭以外の複数の炭種を用いた運転とデータ取得
  • ・亜瀝青炭3炭種を用いプラント運転を実施し運転データを取得
  • ・炭種性状によりガス化炉後流にある熱交換器伝熱管に詰まりが発生する場合有り
設計炭以外の3炭種の運転状況を分析し、商用機設計に資するデータを取得
ガス化炉後流熱交換器(SGC)伝熱管に詰まりが発生する場合がある
炭種性状に応じてトラブルの発生防止など様々な対応が必要なことが判明目標達成

4) 高効率性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・目標熱効率
    (送電端効率:LHV42%)の達成
  • ・送電端効率42.9%(LHV)を確認
高効率性を確認目標達成

5) 耐久性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・長時間運転とその後の開放点検による評価
  • ・年間で延べ5000時間運転到達
  • ・5000時間運転後の開放点検を行い致命的な機器損傷なし
実証設備のIGCC構成が妥当であることを確認したが、今後も継続して中長期的な耐久性等の検証をしていく目標達成

6) 経済性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・運転実績に基づく経済性の評価
  • ・建設費や修繕費は微粉炭火力よりも高いと想定されるが、熱効率の向上や燃料調達費の低減が見込まれる
発電原価として微粉炭火力と同等以下となる見通しは得られる可能性あり。但し修繕費については、コスト低減に向けて今後の精度向上が望まれる目標達成

詳しい試験結果は、実証試験の詳細へ

実証試験の新たな検証項目と内容

1) 信頼性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・試験中に実施した対策についての中長期的な耐久性などの検証プラント異常時における安全停止
  • ・初期トラブルについては運転試験や工事中に対策箇所の確認を実施。SGC差圧上昇やHRSG発錆以外は現在まで大きな問題なし
  • ・中長期的に発生したトラブルとして平成23年度は2件の対策を実施。今度対策箇所の検証を実施予定
  • ・初期トラブル対策について、中長期的な耐久性などの検証を行い、ほぼ問題ないことを確認
  • ・新たに発生したトラブルについても、設備トラブル対策の検証を実施

目標達成

  • ・初期トラブルについてはさらに運転試験や休転工事を通じて中長期的な耐久性の検証を実施。ほぼ問題ないことを確認した
  • ・中長期的に発生した新たなトラブルとして平成24年度は2件の対策を実施。年度末点検にて対策箇所の検証を実施

2) 炭種適合性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・炭種性状に応じたトラブル発生防止方策の確立
  • ・瀝青炭(コロンビア炭、ロシア炭、インドネシア炭)を用いたプラント運転状態を確認
  • ・炭種性状によりガス化炉後流にある熱交換器伝熱管に詰まりが発生する場合有り
  • ・設計炭以外の5炭種について、運転パラメータ調整による運転状態を確認し、炭種ごとの運転最適化を図った
  • ・熱交換器伝熱管詰まりについては設備面や運用面での対応により対策の効果を確認した

目標達成

  • ・亜瀝青炭(米国炭)、瀝青炭(カナダ炭)を用いたプラント運転状態を確認
  • ・ガス化炉後流にある熱交換器伝熱管詰まりについては、設備面や運用面での対応により対策の効果を確認した

3) 経済性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・設備点検のサンプル数を増加させつつ、微粉炭火力並みのコスト実現に向けての検討
  • ・ガス化炉後流にある熱交換器の容積低減を図る方策を検討
  • ・点検周期の延伸化について見直しを検討
  • ・熱交換器容積低減方策が問題ないことを確認し、設備の容積低減が可能となる見通しを得た
  • ・設備点検、運転試験、設備トラブルを通じて、点検周期や点検範囲の精度向上を図った

目標達成

  • ・ガス化炉後流にある熱交換器の容積低減方策を一部実施し、問題ないことを確認
  • ・点検周期の延伸化について見直しを検討

IGCC(石炭ガス化複合発電)研究開発の経緯

実証機プロジェクトスケジュール

パイロットプラント試験 FS 要素研究 事前検証試験 設計研究

パイロットプラント試験

1.勿来パイロットプラント試験の概要

 1986(S61)年度に、電力9社、電源開発および電力中央研究所が共同して「石炭ガス化複合発電技術研究組合(IGC組合)」を設立し、国からの補助を受けて勿来パイロットプラントプロジェクトがスタートしました。1991(H3)年6月からガス化試験を開始しましたが、当初は、ガス化炉に溶融した石炭灰が付着・成長してガス化炉を閉塞させるスラッギングが多発し、ガス化炉の長時間安定運転ができませんでした。そこで、1994(H6)年度にガス化炉の抜本的な改造を実施し、以降順調な運転が可能になり、連続運転789時間を達成。1996(H8)年2月に成功裏に運転を終了しました。

勿来パイロットプラント

勿来パイロットプラント

主な仕様

規模:
石炭200t/日(電気出力2.5万kW相当)
方式:
ガス化炉-噴流床空気吹き
ガス精製-乾式流動床脱硫
体制:
国→NEDO→IGC組合
場所:
常磐共同火力勿来発電所構内

パイロットプラント運転実績(累計時間)

パイロットプラント運転実績(累計時間)

2.パイロットプラント運転実績

パイロットプラント運転実績

3.パイロットプラント運転試験結果

システム検証 ガス化炉、ガス精製、ガスタービン一体の空気吹きガス化システムとして基本技術の成立性を確認
IGCCシステムとして各種のクリティカル条件(燃料発熱量等)を把握
スラッギング現象等要素試験では把握できない石炭ガス化炉特有の事象を確認
スケールアップ
データの取得
ガス化炉およびガス精製の適正なスケールアップ方法を把握
スケールアップに際しては、可能な限り多くの要因に対する事前検証が重要
熱効率 各設備ともに初期の目標値を達成
微粉炭火力に比べて所内動力が大きく、一層の所内動力の削減が必要
試験結果に基づく概念設計では、1,300℃級先進型ガスタービンを用いた場合には、送電端効率43%超を確認
経済性 微粉炭火力より若干割高になる見込みであり、建設費の一層の削減検討が必要
環境適合性 運転試験結果からSOx、NOx、ばいじんについては、各々煙突出口で20ppm、20ppm、1mg/m3N以下の見通しが得られた
炭種適合性 3炭種の運転試験結果から、酸素富化および融点降下剤(石灰石)の添加を行えばワークワース/モーラ炭程度の性状の石炭は運転可能であることを確認
運用特性 運転試験結果および概念設計検討結果より、冷態起動時間は、約1日程度
負荷追従性は微粉炭火力並み以上の達成の見込み
信頼性 累積運転時間4700時間の実績を得たが、長期運転信頼性の検証については、実証機の課題
個別機器の選定材料等については、数年程度の耐久性に関しての知見が得られた

FS

FS(Feasibility Study)編

 1997(H9)年度には、IGCCの各方式(ドライフィード/スラリーフィード給炭、酸素吹き/空気吹きガス化、乾式/湿式ガス精製)について、信頼性・熱効率・環境特性・経済性等の観点から総合評価を行い、わが国で開発を進めるべき実証機方式を選定しました。

 その結果、勿来パイロットプラントで試験を実施したドライフィード酸素富化空気吹きガス化炉に、湿式ガス精製方式を組み合わせた方式が実証機として最適であるとの結論を得ました。

 1998(H10)年度には、上記で選定したIGCC方式を対象として、機器仕様の検討・設計パラメータ変化時の影響・商用機の試設計等を実施しました。

主な検討項目

1)低炭化度炭の使用に関する検討
2)石炭の粉体供給方式の比較検討
3)H2S吸収液のCO2選択性がシステムに与える影響
4)空気分離装置の酸素純度がシステムに与える影響
5)1500℃級ガスタービンによるIGCC商用機プラントの試設計

要素研究

要素研究編

 1997(H9)年度~1998(H10)年度にわたり、パイロットプラントで残された課題を解決するため、「石炭供給の安定化」、「ガス化炉の大型化」、「ガス精製設備の信頼性向上」、「ガスタービン設備」の4分野について、試験設備を使用した個別機器毎の要素研究を実施しました。

1)石炭供給の安定化

 窒素による微粉炭の高濃度搬送試験を行い、石炭の安定供給方法についての知見や実証機へ適用できる見込みを得ることができました。

2)ガス化炉の大型化

 24t/日規模のガス化炉試験設備を用いて、ガス化炉の大型化の予測・評価試験を実施しました。この結果、性能予測シミュレーションとほぼ合致する試験結果が得られ、信頼性の高い実証機の性能予測を得ることができました。

3)ガス精製装置の信頼性向上

 石炭ガス中にはCOS(硫化カルボニル)が含まれており、これをH2Sへ転換させるための触媒の性能および耐久性を確認するための試験や高濃度SO2に対する石灰石膏法の脱硫性能確認試験、石炭ガス中に含まれる微量不純物の除去性能の確認試験等を実施しました。

 この結果、触媒に関しては実証機で適用可能な見通しが得られ、脱硫性能試験では極めて高い脱硫効率が得られました。また不純物除去性能試験では、アンモニア等の不純物の除去が可能であることを確認しました。

4)ガスタービン設備の信頼性向上

 ガスタービンの翼に付着するデポジットの付着特性や耐腐食コーティングの性能評価に関る研究を行い、デポジット付着メカニズムを解明することができたほか、実証機用ガスタービン翼に有効なコーティング方法を確立することができました。

事前検証試験

事前検証試験編

 1999(H11)~2001(H13)年度において、実証機の信頼性向上を目的とし、実証機の本格設計の前段階として実施している設計研究をベースに、「ガス化炉」、「ガス精製」、「ガスタービン」の各機器について信頼性検証試験を行いました。

1)ガス化炉構成機器の信頼性検証試験

 24t/日石炭ガス化炉試験設備を用いて、ガス化試験を実施し、各部品の磨耗等を調査した結果、磨耗、焼損や動作不良等の異常は認められませんでした。この結果、現在計画している材料や部品の仕様について、信頼性が確保されていることを確認しました。

 また実証機候補炭による酸素濃度変化試験および炭種変化試験を実施し、炭種毎のガス化特性を把握することができました。

 さらに高温ガスフィルタ評価試験の実施で、フィルタ毎の差圧特性・集塵特性を把握し、機種選定の一助となるデータを取得できました。

 その他、実証機と同スケールの機器(大型粉体弁、高圧除煤装置)を使用して、実機の動作環境を模擬した条件下で作動試験を実施し、機器の信頼性を確認しました。

2)ガス精製構成機器の信頼性検証試験

 湿式ガス精製プロセスにおいて、石炭ガス中のHCl、NH3から生成されるNH4Cl(塩化アンモニウム)の析出・昇華挙動を調査し、NH4Clの析出特性を把握することができました。

 また石炭ガス中のH2Sを吸収する溶液(MDEA溶液)の劣化挙動を把握するため、基礎試験装置を用いて模擬ガスによる吸収劣化試験を実施し、吸収液の劣化特性を評価することができました。

 その他、H2S燃焼炉の切替バルブ(実証機と同スケール)の耐久性試験や、実石炭ガス発生器を有した湿式ガス精製一貫設備を用いた石炭ガス中の不純物除去性能の確認試験、石炭ガスの熱交換器(GGH)における塩化アンモニウム付着対策試験を実施し、機器の信頼性を確認しました。

3)ガスタービン構成機器の信頼性検証試験

 ガスタービン翼のデポジット付着特性、およびコーティング材の腐食成分侵入現象を解明するための研究を実施しました。

 デポジット付着特性については、実際の付着物組成と凝縮組成計算コードから求めた付着物組成がほぼ合致する結果が得られ、凝縮組成計算コードの信頼性が確認できました。

 またコーティング材の腐食成分侵入現象については、腐食成分の濃度および翼のメタル温度との相関関係を解明することができました。

 さらにデポジットに対するメタル温度と時間の依存性データや、圧力・温度依存性データを取得するため、様々なパラメータを変化させ、試験片や実翼の暴露試験を実施しました。

設計研究

設計研究編

 1999(H11)~2001(H13)年度において、実証機建設を前提とした研究開発に主眼を置き、「概念設計」、「システムの安全性・信頼性評価研究」を実施しました。

1)概念設計

 「事前検証試験」の試験条件を決定するため、また後述する「システムの安全性・信頼性評価研究」を行なうためのプラントモデルを提供するため、プラントの概念設計を行いました。

 1999(H11)年度は、プラント全体の概略機器設計を行うことにより、実証機部品の使用条件を決定しました。また実証機で想定される課題および制約条件を個別機器毎に抽出し、それらを解決するための方法を見出すことができました。

 2000(H12)年度には、大気温度、ガス化空気比、酸素濃度等のパラメータを変化させた場合にシステム全体に与える影響度を解析し、最適な機器容量の裕度等を検討しました。またこれらの結果を反映した実証機の概略機器設計を実施しました。

2)システムの安全性・信頼性評価研究

 1999(H11)年度は、安全性・信頼性評価手法の1つであるFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)を用い、機器毎および系統毎に、異常事象の抽出、異常事象の発生頻度、システムに及ぼす影響度およびその対策案を分析しました。その結果、機器毎の信頼性レベルや安全性レベルを把握することができました。

 2000(H12)年度には、前年度のFMEAと手法の異なる、安全性・信頼性評価手法の1つである操業偏移解析(HAZOP:Hazard and Operability Analysis)を用い、異常事象の発生要因やその影響度を推定および評価を行いました。

 また、実証機の通常負荷変化時および起動停止時における機器の運転状態の変化(動特性)をシミュレーションにより予測し、実証機の制御方法や運転方法の検討を行いました。

設備のメカニズム

設備のメカニズム

ガス化炉設備

 ガス化炉は内部の圧力が約3MPaに保たれた圧力容器となっており、その中に水冷壁で囲まれたガス化炉室があります。

 ガス化炉室はコンパスタ部とリダクタ部の二室に分かれています。この中にバーナから微粉炭と空気が吹き込まれ、ガス化炉反応が起こります。

 コンバスタ部は、微粉炭を約1,800度の高温で燃焼させ、リダクタ部におけるガス化反応に必要な高温熱源を発生させるとともに、石炭灰を溶融スラグとして排出する機能を持っています。

 リダクタ部は、コンバスタ部から上昇してくる高温ガスに微粉炭を吹き込んでガス化するとともに、ガス化の吸熱反応を利用してガス温度を低下させ、後流のSGC熱交換器での灰付着トラブルを防止する機能を持っています。

 ガス化炉内部がコンバスタ部をリダクタ部の上下二段に分けられていることから、このガス化炉の方式は「二室二段噴流床方式」と呼ばれます。二室二段噴流床方式の特長は、コンバスタ部に重点的に空気を投入して内部を高温にすることで灰の溶融を容易にしていることと、リダクタ部をガス化反応に特化させ、スムーズなガス化反応を実現しているところです。

 なお、ガス化炉内に投入された微粉炭のうち、反応しきれなかった固定炭素を含む粉体(チャー)は、チャー回収装置で捕捉して、もう一度ガス化炉に吹き込みます。チャー回収装置は、サイクロンポーラスフィルタで構成されています。

ガス精製設備

 ガス精製設備では、ガス中に含まれる硫黄化合物窒素化合物などを取り除きます。精製方式は、水洗や薬液を使用した湿式ガス精製方式を採用しています。

 硫黄化合物は、アミン溶液を用いて取り除きます。ただし、ガス化炉生成ガス中の硫黄化合物の組成は、H2S(硫化水素)、COC(硫化カルボニル)が主形態であるため、アミン溶液での吸収を可能とするよう、COS変換器内部における触媒反応によってCOSをH2Sに変換します。その後、石炭ガスをアミン水溶液にくぐらせ、H2Sを吸収します。

 H2Sを吸収したアミン溶液は、再生塔で加熱されてH2Sを拡散します。その後、H2Sは燃焼することによってSO2(二酸化硫黄)となり、SO2吸収塔で石膏はフライアッシュを含まないので、微粉炭火力において回収されるものに比べ、純度が高くなります。

 また、ハロゲン、アンモニアなどの微量成分は、ガスを水洗する段階で除去します。

複合発電設備

 複合発電設備は、発電機・蒸気タービン・ガスタービンを同軸上に配置する「一軸方式」を採用しています。まず、石炭ガスを燃焼させてガスタービンを駆動し、燃焼後のガスタービン排熱を排熱回収ボイラ(HRSG)で回収して蒸気をつくり、ガス化炉から発生する蒸気と合わせて蒸気タービンを駆動します。なお、ガスタービンと蒸気タービンの出力比は、LNGコンバインドサイクル火力が概ね2:1であるのに対し約1:1となっています。これは、ガスタービンからの排熱に加え、ガス化炉(SGC熱交換器)からの熱も利用できることから、LNG火力に比べ蒸気タービン側により多くの出力を持たせることができるためです。

 ガスタービンの空気圧縮機出口からは、ガス化炉において必要となる圧縮空気を供給するための抽気ラインが設けられており、所内動力の低減に寄与しています。燃焼器は軽質油・石炭ガスのデュアルモードに対応できるものを使用しています。

 また、脱硝装置を排熱回収ボイラに組み込み、低NOx化を図っています。

IGCC実証機の仕様

出力 250MW
石炭使用量 約1,700t/日
方式 ガス化炉 空気吹きドライフィードガス化
ガス精製 湿式ガス精製(MDEA)+石膏回収
ガスタービン 1,200度級
目標熱効率※ 発電端 48% (46%)
送電端 42% (40.5%)
環境特性
(目標値)
SOx排出濃度 8ppm (O2 16%換算)
NOx排出濃度 5ppm (O2 16%換算)
ばいじん排出濃度 4ppm (O2 16%換算)

※ 熱効率の値は低位発熱量基準(LHV)。カッコ内の数値は高位発熱量基準(HHV)。

実証計画概要

 IGCCの開発は、経済産業省の支援を得つつ、電力会社9社※、電源開発(株)および(財)電力中央研究所の計11法人が共同で推進しています。

 1986(S61)年度~1996(H8)年度は、石炭ガス化複合発電技術研究組合(IGC組合)が主体となり、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受け、福島県勿来において石炭処理量200t/日(2.5万kW相当)のパイロットプラント試験を行い、大きな成果を得ました。

 1997(H9)年度~1998(H10)年度のFSや要素研究、また1999(H11)年度~2001(H13)年度までの事前検証試験や設計研究を経て、2001(H13)年度に空気吹きIGCCの開発を目的に、9電力会社と電源開発(株)の出資のもと、(株)クリーンコールパワー研究所が設立されました。プロジェクト費用は国(経済産業省資源エネルギー庁)からの補助金(2009年度まで)と、電力会社9社、電源開発(株)および(財)電力中央研究所の11法人で分担しています。

 実証機プロジェクトのスケジュールは、2001(H13)年度~2004(H16)年度までの3年間で、実証機の詳細設計と環境影響評価を実施し、2004(H16)年度~2007(H19)年度の間に実証機を建設しました。その後、ガス化炉に点火した2007(H19)年9月~2010(H22)年度末にかけて、約4年間にわたる実証試験を実施し、IGCCの信頼性や運用性、耐久性、経済性などの検証を進め、いずれも当初の目標・指標は概ね達成することができました。

 また今後は、2011(H23)年度から2012(H24)年度末までの2年間、新たな課題への対応とIGCC技術の成熟化に向けて、主として信頼性、経済性、炭種適合性に関する検証試験をさらに進め、円滑な商用化へつなげていく計画です。

※北海道電力(株)、東北電力(株)、東京電力(株)、中部電力(株)、北陸電力(株)、関西電力(株)、中国電力(株)、四国電力(株)、九州電力(株)

実証機プロジェクトスケジュール

石炭の新しい可能性を求めて。

IGCC(石炭ガス化複合発電)開発プロジェクトの目的 地球温暖化対策のためには、風力や太陽光といった新エネルギーの導入や原子力、LNG火力発電の推進を実施していくことが重要ですが、資源の乏しいわが国においては、エネルギーセキュリティー確保のために世界において埋蔵量が豊富で価格の安定した石炭を利用した火力発電を導入し、電源のベストミックスを図ることが重要です。

 このためには、高効率な石炭火力発電技術の開発により、エネルギーセキュリティと地球温暖化対策を両立させることが不可欠であり、IGCCはこの中核技術になると考えています。

 また、IGCCは国内における石炭の利用だけでなく、海外における石炭火力の飛躍的な効率改善による温暖化ガスの大幅削減や環境性能の大幅な向上等にも役立つと考えられています。

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