勿来発電所10号機(IGCC)の運転状況
小野光司,日本機械学会,2016.9
勿来発電所10号機(IGCC)の運転状況
高橋健,日本機械学会,2015.9
石炭ガス化複合発電(IGCC)の最新事情と課題
石橋喜孝,日本原子力学会,2015.5
「石炭ガス化複合発電(IGCC)商用設備の 最新運転状況、課題と今後の展開)」 (PDF 4MB)
石橋喜孝,日本計画研究所,2014.2.7
Progress in NAKOSO 250 MW Air-Blown IGCC Demonstration Project (PDF 2MB)
布川 信,International Conference on Power Engineering-2013 (ICOPE-2013),2013.10.24
The Completion of the Air-blown IGCC Demonstration Test and its Conversion to Commercial use (PDF 0.5MB)
石橋喜孝,World Energy Council,2013.10
「石炭ガス化複合発電(IGCC)実証機の実証試験終了と商用転用 (PDF 0.8MB)
石橋喜孝,エネルギーと動力 2013春季号
4月 空気吹きIGCC 2013年度日本機械学会賞(技術)受賞
東京都港区の明治記念館において,2013年度日本機械学会賞授賞式が執り行われ,当社の「高効率空気吹きIGCCの開発」が,2013年度日本機械学会賞(技術)を受賞しました。
12月 IGCC設備における世界最長連続運転記録3,917時間を樹立
10号機は,2013(平成25)年6月28日より石炭ガス化運転をスタートさせ,同年12月8日20時に停止し,中間点検に入りました。 この間の連続運転時間は3,917時間であり,これまでオランダのブフナム発電所が持っていた世界記録3,287時間を大幅に更新しました。
11月 IGCC設備における世界最長連続運転記録を更新
10号機は,日本初のIGCC商用機として2013(平成25)年6月28日より石炭ガス化運転を開始し,その後順調に運転を続け,同年11月12日13時35分をもってIGCC設備における世界最長連続運転記録3,287時間(オランダブフナム発電所)を更新しました。
6月 10号機 営業運転開始
10号機は,2013(平成25)年3月4日から定期事業者検査で停止しておりましたが,同年6月30日17時に営業運転を開始しました。
4月 IGCC実証機を10号機として商用機に転用
当社は,2013(平成25)年4月1日付で株式会社クリーンコールパワー研究所を吸収合併しました。 同社の石炭ガス化複合発電設備は10号機(IGCC・定格出力25万kW)として商用機に転用し,運転を継続することとなりました。
用 語 | 意 味 |
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アミン | 石炭ガス中の硫黄化合物を吸収して石炭ガスから取り除く役割をしているガス精製用の薬液のこと。 |
亜瀝(れき)青炭 | 日本における石炭火力発電用の燃料として利用はあまり進んでいないものの、瀝青炭に比べ価格的に有利で埋蔵量も豊富なことからIGCCでの利用が検討されている。石炭中の炭素の含有量や発熱量も瀝青炭より低い。 |
硫黄回収設備 | オフガス燃焼炉にて硫黄分を硫黄酸化物にした後、石灰石スラリーを用いて硫黄酸化物を吸収し、石膏として回収する設備。 |
硫黄化合物 | 石炭中の硫黄が燃焼することにより生成する硫化水素(H2S)や硫化カルボニル(COS)等の硫黄を含む化合物のこと。 |
ガス化炉 | 微粉炭をガス化するための反応炉 |
ガスタービン燃料切替 | プラント起動時、ガス化炉で石炭ガスが発生するまでは灯油を燃料としてガスタービンを運転する必要がある。石炭ガス発生後にガスタービンの燃料を灯油から石炭ガス(停止時は石炭ガスから灯油)へ切替を行うこと。 |
(チャー回収装置) サイクロン |
遠心力を利用し、石炭ガス中の粗粒チャーを回収する設備。 |
所内動力 | ポンプやファン等のプラント設備を動かすために必要な動力のこと。 |
スラグ | 石炭中の灰分が、高温のガス化炉で溶け、ガス化炉下部の水中に流れ落ちて急冷されることでガラス状に固まり、粒状で排出されるもの。 |
石炭ガス化反応 | 石炭を熱し揮発分ガスと固体分のチャーに分解した後、チャーが二酸化炭素(CO2)や水(H2O)等と反応し、一酸化炭素(CO)や水素(H2)等のガスに変換される一連の反応のこと。 |
送電端効率 | プラントに供給した石炭のエネルギーのうち、どれだけ電力に変わるかを示す指標を効率というが、プラントで発電した電力からプラントを運転するために必要な電力を差し引いた送電端電力の効率を示すもの。 |
脱硝装置 | ガスタービン排ガス中の窒素酸化物を取り除くため、アンモニアや触媒を用いて窒素酸化物を窒素(N2)と水(H2O)に分解する装置。 |
窒素化合物 | 石炭や燃焼用空気に含まれる窒素分が燃焼することにより生成するアンモニア(NH3)等の窒素を含む化合物のこと。 |
チャー | ガス化炉中において、石炭から揮発分や水分を除いて得られる未反応固形物で主に灰分と固定炭素から成るもの。 |
デュアルモード | ガスタービンの燃料として通常は石炭ガスを使用するが、プラント起動・停止の際は灯油を使用するといった2種類の燃料が使用できること。 |
ハロゲン | フッ素(F)や塩素(Cl)等の元素を指し、このプラントではフッ化水素(HF)や塩化水素(HCI)等の形で石炭ガス中に存在するもの。 |
フライアッシュ | 従来の微粉炭火力のボイラで燃焼により発生するもので石炭中の灰分が粉状となったもの。 |
(チャー回収装置) ポーラスフィルタ |
サイクロンの後流側にあり、フィルタを用いて石炭ガス中の微細チャーを回収する設備。 |
瀝(れき)青炭 | 日本における石炭火力発電用の燃料としてよく用いられるもの。石炭中の炭素の含有量が無煙炭に次いで高く、発熱量は亜瀝青炭より高い。 |
ASU | 空気分離設備(Air Separation Unit )のことで、IGCCでは微粉炭を安全に搬送する等の目的で窒素を使用するため、大気中の空気から窒素(N2)や酸素(O2)を分離する設備。 |
LHV | 低位発熱量(Lower Heating Value)のことで、燃料が燃焼したときに発生するエネルギーを表示する際に、燃料中の水分および燃焼によって生成された水蒸気の蒸発潜熱(凝縮熱)を除いたもの。 水蒸気の蒸発潜熱(凝縮熱)を含むのが高位発熱量(HHV:Higher Heating Value)という。 |
SGC熱交換器 | シンガスクーラーと呼ばれ、ガス化炉で発生した石炭ガスの熱を利用して、蒸気タービンを駆動するための蒸気を発生させる設備。 |
固体の石炭をガス化することで蒸気タービンにガスタービンを組み合わせた発電ができるため、従来の石炭火力の発電効率約42%に対して商用段階IGCCでは48~50%の発電効率が見込まれます。
これにより石油火力とほぼ同等のCO2排出量で石炭利用発電が可能となります。
資源量が最も豊富な石炭の利用技術であり、従来の石炭火力では利用が困難な灰融点の低い石炭も適合するため、利用炭種の拡大が可能となります。
固体の石炭をガス化することで蒸気タービンにガスタービンを組み合わせた発電ができるため、従来の石炭火力の発電効率約42%に対して商用段階のIGCCでは48~50%の発電効率が見込まれます。
システムの高効率化により、発電電力量(kWh)あたりのSOx、NOx、ばいじんの排出量が低減できます。
従来型石炭火力では、多量の石炭灰が発生しますが、IGCCではガラス状のスラグとして排出されるため容積がほぼ半減できます。
またスラグは、セメントの原材料や路盤材等としてリサイクルが可能です。
温排水の低減
IGCCはガスタービンを用いたコンバインドサイクル発電なので従来の石炭火力に比較して温排水量を約3割低減できます。
用水使用量の低減
従来の石炭火力の排煙脱硫装置は、燃料を燃やした後の排ガス段階でばい煙処理を行うので、多量の用水が必要でしたが、IGCCは燃料ガス段階で処理を行うので用水使用量を大幅に低減できます。
IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle)石炭ガス化複合発電
IGCCは、石炭をガス化し、C/C(コンバインドサイクル発電)と組合わせることにより、従来型石炭火力に比べ更なる高効率化を目指した発電システムです。
従来型石炭火力 | ![]() |
<機器構成> ボイラ+蒸気タービン |
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ボイラ内で石炭を燃焼し蒸気を発生させます。この蒸気の膨張力により蒸気タービンを回転し、直結した発電機を回します。 |
C/C発電(コンバインドサイクル発電) | ![]() |
<機器構成> ボイラ+蒸気タービン+ガスタービン |
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圧縮した空気の中で燃料を燃やして燃焼ガスを発生させます。このガスの膨張力によりガスタービンを回転し、直結した発電機を回します。さらに高温の排ガスをボイラに導いて蒸気を発生させ、蒸気タービンを回します。 |
IGCC(石炭ガス化複合発電) | ![]() |
<機器構成> ボイラ+蒸気タービン+ガスタービン+ガス化炉 |
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ガス化炉内で石炭をガス化し、燃料ガスを発生させます。この燃料ガスをガスタービンに導き、燃焼させることにより、ガスタービンを回します。さらに高温の排ガスをボイラに導いて蒸気を発生させ、蒸気タービンを回します。 |